NAMIMONOGATARI2021の事例からみる補助金の落とし穴

コロナで人々が自粛を強いられるなか、

8,000人以上の観客がノーマスク、デイスタンスなしで参加した「NAMIMONOGATARI2021」。

このイベントの主催者であるoffice keef株式会社は、開催にあたり上限3,000万円の補助金を申請していました。

しかし、誓約した内容を大きく違反したとして、2021年9月7日、補助金交付の取消しが決定しました。

誓約内容のひとつに、コロナ対策も盛り込まれており、それらに大きく違反していたからです。

 

連日取り上げられていたこともあり、このニュースをご存知の方も多いでしょう。

コロナ渦であんな無謀なイベントはありえない!感染拡大の不安がまたひとつ増えた!

いろんな声が聞こえてきそうですが、ここでは、あえてコロナ対策の視点で可否を問うのではなく、

補助金の落とし穴という別の視点から、この事例をみていきたいと思います。

 

補助金とはそもそも何?

 

そもそも補助金とは何なのかを改めて確認してみましょう。

簡単にいうと、補助金とは、なんらかの事業をするにあたって資金が欲しい!と思ったとき、

国や地方自治体からその資金の一部を給付してもらえる制度のことです。

ここで重要なのは、それぞれの補助金が「国や自治体の政策目標に合わせて(経済産業省HPより引用)」募集されているということ、つまり、その目標に見合った事業者のみが給付してもらえるという点です。

また、融資などとは違い返済は必要ありませんが、「事前審査」と「事後審査」の2つをくぐりぬけなければなりません。

そして、原則は、資金が必要な事業が終わったあとに給付される後払い制となります。

 

申請方法や給付金額は補助金によってばらばらですが、大まかな流れは次のとおりです。

①事業にあう補助金を調べる

②申請する

③無事、採択される(却下の場合もある)

④事業スタート

⑤事業について報告する

⑥補助金が交付される(その後、定期的な事業報告等が必要な場合がある)

 

ちなみに、コロナ渦での主な補助金には、飲食店を対象にした月次支援金やポストコロナをふまえた新たな事業をスタートする事業者に向けた小規模事業持続化補助金などがあります。

NAMIMONOGATARI2021で申請された補助金は、「コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金(J-LODlive補助金)」。

この補助金は、コロナ染拡大により、音楽、演劇などの日本のコンテンツが、海外に向けてプロモーション展開する機会が失われていることを受け、公演の実施費用とPR動画の政策配信費用を給付してくれるものでした。

上記はコンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金(J-LODlive補助金)の概要から引用

 

補助金は採択されたら終わり?

 

では、なぜNAMIMONOGATARI2021の主催者であるoffice keef株式会社は補助金を取り消されたのでしょうか?

それはみなさんご存知のとおり、採択された後の事業内容に問題があったからです。

具体的には、チケット新規販売停止や酒類販売自粛への違反、基本的感染対策の不徹底など、

補助金申請時に誓約していたコロナ対策に関する内容を大きく違反していたからです。

これなら補助金などもらえるはずがない!と誰もが思うでしょう。

実は、こういった事例は、決して遠い出来事ではなく、身近にひそむ補助金の落とし穴を示しているのです。

 

 

上記はコンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金(J-LODlive補助金)の公募要領から抜粋したものになりますが、補助金の交付決定取消において、採択した用途以外での利用や不正、不適当な場合が含まれています。

それ以外にも誓約書での宣誓事項に違反した場合なども含まれています。

 

そもそも補助金をもらうには「申請」が大変といったイメージはありませんか?

無事採択されたら、やり遂げた!もうこれで終わり!という気持ちになるかもしれません。

しかし、採択された後も、やるべきことは多いのです。

例えば、申請通り事業を行うことはもちろん、事業終了後も定期的に経営報告をすることが求められる場合があります。

また、提出した経費明細書通りの支出や、ぶあつい補助金の手引き内容を全部理解し、それを守らなくてはなりません(違反などはもっての他!)。

ここが、補助金の落とし穴です。

 

補助金を上手く活用するために

 

このように、補助金は申請だけでなく採択後もすべきことが多く、交付されたら終わり!というわけにはいきません。

思ったよりも大変だったとならないためにも、補助金申請に慣れている専門家(弁護士や税理士、行政書士など)に頼むのが得策です。

昨今のコロナ渦による苦しいご時世のなか、うまく補助金を使うことが求められています。

ただ資金を調達するためだけに申請するのではなく、今後を見据えてどのように補助金を使うべきなのか、そこまでしっかりと踏み込んで考えてくれるそんな専門家をぜひ頼ってみてください。